『大志』岸 かおり
2004年12月30日

 小学1年の長男が先日、作文にこんなことを書いていた。
「おとうとは、さいきん手をつかないですわれるようになりました。
まだゼロさいなんですよ!じまんです」

二男の大志(たいし)はもうすぐ一歳。同じ月齢ならもう歩ける子もいるんだけどな。 思わず苦笑いした後、長男のまなざしにドキッとした。
 彼の頭の中には発育曲線もなければ、「ダウン症なのにこんなに頑張っている」という、思いさえもない。 ただ目の前にいる弟の小さな成長を発見し、素直に喜ぶ心だけなのだ。

 発育がゆっくりであることは、覚悟をしていたものの、ほかの子との差が開いてくることに 内心穏やかでなかった私にとって、目が覚めるような愛情表現だった。

 人はだれでもゼロからのスタート。出発点がどこであれ、そこからどれだけ頑張ったか、 大切なことはそれだけ。他のだれとも比べる必要はないんだね。

 分っていたつもりだったのに、いつの間にか忘れていた。大志は大志なんだっていうこと。 お母さんも少しは成長できたかな。
光太郎、大志、ありがとう。これからもよろしくね。

(主婦・39歳=福岡市早良区)

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