『お宝ウンチ』竹森 久美
2004年3月18日

「僕のウンチは触れんと?」。
か細く震える涙声の息子の目から大粒の涙がこぼれた。
瞬時に自分の過ちに気付いた。

 弟の誕生後、毎日続くオムツ洗いの様子を不思議そうにのぞき込んでは 「ウンチ汚くない?」「嫌じゃない?」と尋ねる息子。
私は「愛してるから平気よ。お宝ウンチよ。汚くなんかないよ」と答える。すると息子は「愛しとったら、ウンチって 触れると?」と、感心するのである。

 なのにある日、忙しさの中で心をなくしていたのか、遊びに夢中になり、ゆるいウンチを 漏らした息子に「もうこのパンツは捨てとくよ」と、冷たく言い放ってしまったのだ。 たった一言で、純粋な心を深く傷つけてしまったのである。救いだったのは、息子がそのショックをすぐに 言葉に出し、失言を気付かせてくれたことだ。

悲しみに打ちひしがれている息子を強く抱き締め、何度もわびた。その場ですぐに、素手で 汚れた下着を洗ってみせると、お宝ウンチとともに、涙も洗い流されたのか、息子は笑顔を取り戻した。
その後、妹も生まれ、お宝ウンチのオムツ洗いは続いた。お宝ウンチは無二の親子愛をはぐくんでくれた。

(主婦・35歳=福岡市南区)

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