≪母として≫

2.1997年5月6日〜その日起きた事(1)〜

連休明けのその日は朝から蒸し暑い日でした。徹は2〜3日前から風邪気味で、前夜は咳のためあまりよく眠れませんでした。 それまで病気らしい病気もした事はありませんでしたが、生まれてからずっと予防接種や定期検診等でお世話になっていた近所の病院に受診しました。 熱は38度台でしたが元気で、尿検査の結果も異常はなく、気管支炎でしょうという事で、注射等の処置は受けずに帰宅しました。

前夜の寝不足からか、病院から帰るベビーカーに乗ったまま眠ってしまい、帰宅しても眠ったままで、そのまま お昼ご飯も食べずお昼寝になってしまいました。その日は、普段お昼寝する場所ではなく、風通しの良い方の部屋に寝かせて、私は台所で徹のお昼ご飯を作ったり、 後片付けをしていました。

途中で何度か部屋を覗いていましたが、1時間ほど眠ったあとで覗いた時に、開いていた窓から飛行機の音が聞こえると、 徹は空を指差してにっこり笑いながら、日頃教えていた通り「ブ〜ン!」と言いました。そして、それが最後の言葉になりました。

その時電話が鳴ったので、まだ眠りそうだった徹を残して部屋を出ました。
それからどれくらい経っていたのか今では確かめる術はありません。もう一度部屋を覗いた時に私の目に飛び込んできた光景を、私は一生忘れる事が出来ないでしょう。
徹はうつ伏せになって、真下を向いていました。