4.そして5月7日
翌7日午後12時39分、医師から臨終を告げられた時、私はうまく事態が飲み込めず、
すぐに悲しいという感情は湧きませんでした。
その直後に、医師から「司法解剖ではないけれど、SIDS以外の病気の可能性もあるので、念の為解剖させて欲しい」旨の申し出があった時も、なぜか冷静に
「本当は何か病気が隠れているのかも知れない。」「もしSIDSなら、こんな事が起きなくなる為に徹が役に立つのなら。」と思い、
その申し出に応じました。そして、今でもその事は後悔していません。
3ヵ月後、その時の担当の医師と医局長が剖検の結果を持って、家に来られました。
「何も異常はなく、SIDSとしか言いようがない。」とのことでした。
厚生省の定義では『乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome)とは、全く予期されず、一見して状態の良いと思われる乳幼児に突然
起こる死であり、かつ死亡後に行われる解剖などの検査によっても死因のわからないもの』とされています。
日本では2000人に1人の赤ちゃんがSIDSで亡くなっており
乳児の死亡原因の第2位となっています。欧米では死亡原因の第1位です。2歳までは起き得るとされていますが、実際には一歳を越えた子には非常に稀です。
原因は高体温化による無呼吸説、脳内セロトニン説などありますが、まだ世界的にもはっきり解明されていないのが現状です。
ただ、SIDSの発生率を高める因子が明らかになってきており、それらについてキャンペーンを行った欧米諸国ではSIDSの発生が減っています。
そのキャンペーンの内容は、《あおむけ寝で育てよう》《タバコをやめよう》《できるだけ母乳で育てよう》と、いうものです。
そして、それからゆっくりと、確実に、抗いようのない大きな悲しみの感情が、私を支配し始めました。